怪しい文献庫
南陽堂・六本脚のリストには間違っても(多分)出てこない文献(主にマンガ)の紹介
(一部「月刊きくBook review」より再録)
一応昆虫が出てくるが、クスッと笑える以外は存在を知っていても何 の役にも立た ないと思う

「きらきらと闇に堕ちて」山崎洋子:中央公論社 とか 「黄色い皇帝」芝木好子:文芸春秋社は
南陽堂のリストに出てくるからパス

文献書籍名
作者 出版社
ネイチャージモン
全9巻

原作:寺門ジモン
作画:刃森尊
講談社
2タマガワ以来の怪書 虫+肉の漫画 これでもかとクワガタ産地や 内輪ネタが関係者の本名とともに登 場、1巻で早川氏も(何と幽霊役?で)出演している
でもって、1・5巻の「トシちゃん」ってのはトシ坊のことだろうな、やっぱ

画像の4巻ではインセクトフェアネタが炸裂:7巻以降は肉の漫画となり、クワガタネタはジモンの人物紹介以外には出てこない 0
オサムシ教授の事件簿
全5巻
山口よ しのぶ 集英社 この2つは事件(ベクターは生物関連、オサムシは人間の事件) を 昆虫に詳しい人物(ベクターは虫好き女子高生、オサムシは生物学教授)が昆虫の生態に関連させて解決するというスタンスは 似ている。無駄にエ ロシーンが多い上に章によってはこじつけ臭が する が、読者のほとんどを占めるはずの一般人にとってはそんなことは気にする必要がないのであろう

オサムシ教授の方はオオクワが出てくる巻であるが、中身を載せてしまうとこのページへのリンクにR15認証が必要になるレベ ルのマンガが盛りだくさんであ る

ベクターの方の画像が2巻なのは特に意味はないが、まだ一番おとなしめの表紙だったからである。表紙にはその巻に登場する節 足動物の正面図が載っているの でゴキの顔と向き合うことになったり、そうでなくとも「この格好のどこに必然性が?」と思いたくなる表紙ばかりである
ちなみに原作の藤見泰高氏は昆虫フィールド連載の『鍬道』の作者


ベクター・ケースファイル
全10巻
原作:藤見泰高
作画:カミム
ラ晋作
秋田書店
サイカチ


これは上記ベクターケースファイルの榎木が最初に登場した作品のようで、クワガタムシを戦わ せる少年と榎木とのふれあいを描いたもの。この作品で人気が出た榎木を主人公に「ベクター……」が描かれたらしい。単行本に し て4巻分程度連載されたはずで、現にKinder版(電子書籍版)では存在しているのだが、紙ベースの書籍としては1巻しか 見ることができていない。
内容はいかにもそれらしく生態と絡めてストーリーを構成させているが、同じケースに入れておくだけでフェロモンが移動するの かとか(だったらベタベタ♀に触った指に対して交尾行動を起こすオスとかいるはず)ヒラタの力で挟まれたら鞘翅が傷つく前に 腹板が割れるのではないかなど少々疑問がある描写も見られる
月刊むし 夏休みの自 由研究

エロマンガ研究会
(モヅライツ)
同人誌 むし社の月刊むしも大概「薄くて高い本」であるが、一部の 集団で 「薄くて高い本」と言えば(18禁)同人誌を指す。この本は(腐)女子向けの18禁同人誌で内容(家庭教師(かてきょー) ヒットマンreborn!:リ ボーン× 雲雀)は全く虫と関係がないが、それでもわざわざこのように命名するあたり同人作家という ドマイナー集団にとっても『月刊むし』とい うのが非常にインパクトのある名称(正しく「むし」とひらがなで綴っているので少なくとも認識しているはず)であることがよ くわかる

このページの文献の中でおそらく最も入手しにくいが、それを残念に思う必要は全くない……というか、逆に入手できたときに後 悔する可能性の方が高いので、そん なヒマと労力と金を使う余裕があるのなら、他の文献探しに使うことをお勧めする
ギャラリーフェイク
全32巻

細野不二彦
小学館
図示したのは単行本4巻の裏表紙。別に裏表紙に昆虫が画か れているのを 紹介したいわけではなく、この巻に収録の「蝶々夫人の島」に出てくる羽田並太郎氏が、蝶屋ならだれでも判る有名人がモデルに なっているからである

甲虫屋には「誰が見ても判る有名人」というのはあまりいないと思われ、従ってこの手のメジャー作品に甲虫屋が登場することは ない。それだけにネイチャージ モンのぶっ飛び具合が良くわかるというモノである
2(む しむし)タマガワ
全3巻

さそうあきら
小学館 図示した単行本1巻の裏表紙は交尾するオオクワガタ。これ だけでも結構 な怪しさであるが、本編4ページ(連載時巻頭カラーの終わった次のページ)で主人公甘夏コーイチ(マイ顕微鏡持ってやがる) の本棚には原色日本甲虫図鑑全 4巻などの実在する昆虫書籍が多数並んでおり、次の5ページには『志賀昆虫』の文字が躍るというディープさっぷり
ストーリーは発情期の若者の日常でも、餌カブト・菌糸ビン始め当時の生き虫業界ネタのほとんどが網羅されている取材の深さと いうか綿密さは半端ではない
昆虫探偵ヨシダヨシミ

青空大地
講談社
モーニング2に不定期連載されていたもの。動物の言葉が解 る、しかし人 の話を聞かない探偵の身も蓋もないギャグマンガであるが、昆虫の生態が(正確さについては全く保証できないとは言え)それな りに理由付けされているところ が面白い
また、カバー表紙、カバー下表紙ではロゴになっているカブトムシの他ハムシ・シギゾウムシなどが交尾中で、カブトムシ幼虫が ランドルト環になっているなど の小ネタも楽しい
原作とは全く独立したストーリーで2010年4月に哀川翔主演で映画化
害虫女子コスモポリタン
既刊1(巻数表示なし)

害虫女子コスモポリタン ビッチーズ(2巻)

小谷真倫
講談社
昆虫の擬人化本、と言ってしまえばそれまでであるが、みな しごハッチ (大人の事情で改題後はみつばちハッチ)のような♂蜂が武器(針?)を持っていたりタガメやカマキリが肉食しないようなファ ンタジーと異なり、生態がほぼ 正確に擬人化されている
研究所勤務、害虫オタのイケメン「兄」の飼育するゴキ(♀)とそれに関わる虫たちを擬人化して話が進む
なんだかんだ言われつつもゴキが擬人化された作品はそれなりに存在する が、ある意味我々にとってゴキよ り恐ろしいカツオブシムシ(ヒメカツオブシム シ)やシバンムシ(タバコシバンムシ)が擬人化されたコミックというのは本作だけではないかと思われる
「虫が嫌い」な作者( 作中で述べられている)の感覚なのかカブトムシ♀を「デブのカナブン」と表現している他、我らが五箇公一氏も本人役(ただし 謎のマジシャンに見えるダニの専門家と して)登場している
巻数表示がないため連載終了なのかと不安になったが、本誌で害虫女子コスモポリタンビッチーズとして連載されていた分が単行 本として刊行された。
しかし、その一部はこの2巻(?)には収録されておらず、3巻(ビッチーズ2巻?)が刊行されるのを待つか、収録された本誌 からスキャンしてPDF化すべきか迷う
ビッチーズはシロアリネタとハナアブネタ、その他蘊蓄と下ネタが4分の1ずつくらい
うん、タバコシバンムシブルーは要らん
山賊ダイアリー リアル猟師奮戦記
既刊6

岡本健太郎
講談社 カラス・ウサギ・アケビ・マムシ・ウナギ・イノシシ・カ モ・ハト・ヒヨ ドリなんかを岡山の山中で実際に捕って喰い、嚥下していないだけでタヌキ肉やウサギの 糞、センダンの実の味が推定できるというとんでもない本である。
1巻冒頭、『狩猟に理解を示さない彼女』の話があり、猟に理解を示した女性は見たことがないとも述べられているのだが、虫屋 も♂率が非常に高く、たまに♀ を見 かけてもほとんどが飼育屋さんであることも無関係ではないような気がする。
作者は「命をいただいている」ことをしっかり受け止めて感謝する姿勢を前面に出しており、それは気温3℃の中、池を泳いで 撃った獲物を回収に行くという描 写に も現れている。採った虫を毒ビンにぶちこむわれわれも、こういった姿勢は見習うべきなのではないだろうか
 2巻ではキイロスズメバチ(巣)との戦いが描かれ、巣を確保する道具作成は注目すべきものがある
 6巻では作者が子どもの頃捕まえたクワガタやカブトを(業者に)売っていたというネタがあり(76矢)、ノコギリクワガタ が最も高かった(オオクワ除く)というのは興味深い
 ところで1〜3巻すべて「とりぱん」と同日発売で、6巻もそうだったというのは、講談社が何か狙っているとしか思えない。
とりぱん
既刊19
とりのなん子
講談社
 週刊モーニングに連載中の鳥類を中心とした生態観察漫画
 従来からカマキリ(初令に羽根があるのはご愛敬)やキアゲハと言った昆虫が登場していたが、14巻ではクワガタ♀にスイカ を与えたり、青木幸子氏 (ZOOKEEPER・王狩・茶柱倶楽部の作者)の台湾取材に同行した際、九份において昼間に道から3m程度の枝先にクワガ タムシ (フタテンアカ?)がとまっているのを青木氏が発見する描写がある
 他、青木氏は夜間にナナフシも発見しているらしく、「擬態昆虫を暗い中見つけるなんてすごい」と述べられているが、夜のナ ナフシは意外と簡単に見えるも のである
17巻ではキアゲハの描写に加えてアカアシクワガタ(見た感じ明るい時間帯に飛翔している)も登場
いきものずかん
既刊2

もりちか
アスキー・メディアワークス
この部員数で活動が成り立つのかとか、理科系の部活がたく さんあってう らやましいとかは置いといて、生物部の蘊蓄・解説(+食)担当、植物担当、動物担当が織りなす4コマ。この作品のすごいとこ ろは、”ずかん”の名に恥じず 基本的に登場するすべての生物に学名が記されているところであろう、これで『和名・学名索引』が付いていれば完璧なのだが、 さすがにそこまでは思いつかな かったのであろうか
まぁ、食べるのは基本ですな
WEB連載が終了し、4巻(あと2巻)分くらいの量があるはずだが、続巻が発行される気配がない

まるまる動物記
全2巻

作画:岡 崎二郎
解説:池田清彦
講談社
昆虫ネタはそれほど多くはないが、アリとカイガラムシのよ うに生態的内 容が語られる回と、2巻の無脊椎動物代表としてのハエのように擬人化され人格や思考を持ったキャラとして語られる回がある。 また、脳科学関連を始めアリの 内部を食べる寄生バエなど最新トピックスも取り入れたネタの数々に池田清彦氏がコメントしている構成もすばらしい。大手出版 社発行でありながらマイナー雑 誌というモーニングツーに連載されていたため、全2巻となってしまったのが残念でならない