Prosopocoilus
 日本産は4種(ノコギリクワガタ・アマミノコギリクワガタ・ハチジョウノコギリクワガタ・ヤエヤマノコギリクワガタ)と九州肝属島嶼・南西諸島と伊豆諸 島に数亜種(ミシマイオウ・クチノエラブ・トカラ・オキノエラブ・クメジマ・ミヤケ・ミクラ etc)のように結構細分化されている。 ベトナムには大型から小型まで実に20種以上の種を産するが、インドシナ半島周辺にはノコギリも豊産し、未記載種や近隣地域で記録があるにもかかわ らずベトナムからは未記録であるグループもまだまだ存在している。
ベトナム産ノコギリをまとめた文献は今のところ存在しないようで、一応の解説はBEKUWA10号を参照されたい
ArrowはDorcus属にし、その結果ホモニムになった多くの 種に1949年の”Fauna of India”で新名を与えているのでシノニムチェックが結構大変だったりする

Prosopocoilus confucius (Hope, 1842)
コンフキウスノコギリクワガタ
体長が10cmを超えるクワガタムシはそう多くないが、ノコギリは本種とギラファという巨大種が10cmを楽勝で超える。
TamDao周辺に比較的多産するが、その他の産地では少なく、規制の影響から最近は見る機会がやや減ってきたように思う

TamDao


TamDao


TamDao


Prosopocoilus giraffa (Olivier, 1789)
ギラファノコギリクワガタ
従来インドシナ半島では西部の分布しか知られていなかったが、水沼哲郎氏の所にBaoLoc産の標本があるので、南部には産しているらしい。この個体の形 態は当然かも知れないがタイ産に近い




Prosopocoilus astacoides 
アスタコイデスノコギリクワガタ
原名亜種 ssp. astacoides (Hope, 1840)はアッサムから記載され、インド周辺から北はモンゴル、南はインドネシアまで広い範囲に分布しており、あまり知られていないようだが韓国済州島 にもssp.blanchardi (Parry, 1873) が産する。新大図鑑では北ベトナム産をssp. castaneus (Hope et Westwood, 1845、南ベトナム産をssp. karubei Nagai,2000としている。
余談ながら新大図鑑ではssp.blanchardi を『もっ とも普通★』にしており、実際に台湾では伊豆大島のノコギリ並に採れるのだが、同じ亜種であるにもかかわらず済州島では大珍品で、少なくとも『もっとも普 通★』に分布しているとは思われない。いろいろ意見のある★マークであるが、お遊びの一種とはいえ『大図鑑』を名乗るからには産地の違いに触れてしかるべ きだったのではないだろうか




Prosopocoilus biplagiatus (Westwood, 1855)
ビプラギアトゥスノコギリクワガタ
ツートンカラーの目立つ種で、個体数も多い。一応大歯と呼べる大腮が長く伸びる個体もいるのだが、大半は昔のパチンコ台のチューリップを思わせるような大 腮の個体ばかりである






Prosopocoilus crenulisens (Fairmaire, 1895)
クレヌリデンスノコギリクワガタ





Prosopocoilus spineus (Didier, 1927)
スピネウスノコギリクワガタ
後脛節先端の内側に特徴ある形状の突起があり、同定はしやすい。タムダオ周辺に比較的多産したが、他の地域ではあまり個体数が多くないようで最近はあまり 見かけなくなってしまった。こういう『タムダオ周辺に産する』種が多いことを見ると、TamDao山が好採集地であることの再認識と、一山向こうである中 国南部にはいったいどれだけの種が産するのかという期待感に包まれる





Prosopocoilus oweni ovatus Boileau, 1901
オーエンノコギリクワガタ





Prosopocoilus guerlachi Didier et Seguy, 1952
グエラチノコギリクワガタ
野外産♂は体長が30台後半-せいぜい40mm台の個体がほとんどであるが、飼育によって50mm台がポコポコ羽化している。飼育は極めて簡単と称され、 野外で個体数が少なく小さい原因が思い当たらない

Dalat







Prosopocoilus doris Kriesche, 1920
ドリスノコギリクワガタ
小型ながら頭部・前胸と鞘翅の色彩が大きく異なり面白い種である




Prosopocoilus suturalis  (Olivier, 1789)
スツラリスノコギリクワガタ
黄色っぽい体色の小型種で、旧大図鑑にもあったように左右の大腮の形状が異なるタイプの個体が稀に出現する

Tam Dao




Prosopocoilus sp.
ニセスピネウスノコギリクワガタ
新大図鑑で紹介された未記載種、後脛節の形状がスピネウスと異なる





Prosopocoilus maclellandi (Hope, 1842)
マクレランドノコギリクワガタ
ベトナムにはHaGiang周辺ににssp. miyashitai Nagai, 2005が、南部にssp. chujoi De Lisle, 1964が産する。いずれの地域でも珍品であるが細々と飼育されていたりするので、標本の入手自体は可能である




Prosopocoilus spencii mandibularis Moellenkamp, 1902
スペンスノコギリクワガタ
細かいことを言えばMoellenkampの記載時の属はprosopoco[e]lus だったらしいのだが、こういう時って記載者名は( )で括るものなのだろうか




Prosopocoilus buddha (Hope, 1842)
ブッダノコギリクワガタ
原名亜種はバングラディッシュから記載され、変異が大きいことから独立種として記載された各地の個体群が旧大図鑑で亜種に降格、新大図鑑でもその扱いが踏 襲された。北部にssp. approximatus (Parry, 1864) が、南部にssp. erveri Lacroix, 1988 が分布している

Tamdao




Prosopocoilus forficula nakamurai Mizunuma,1994
フォルフィクラノコギリクワガタ(マルバネノコギリクワガタ)
旧大図鑑で台湾のマルバネノコギリがフォルフィクラの亜種にされ、同時にベトナム亜種が記載された
大腮基部の内歯の発達が悪く、大陸側中国産と一見して違う
中国産は個体数が多くて大型化するのだが、台湾産とベトナム産はなぜか個体数が極めて少なく、しかも大型にならない
TamDao、HaGiangあたりから記録がある

Hagiang


Hagiang



Prosopocoilus gracilis (Saunders, 1854)
グラキリスノコギリクワガタ
 種名のgracilis というのは『スジがある』のような意味らしく、各属に頻繁に見られる種名である。Saunders は本種をProsopocoilus 属のシノニムと扱われるCladognathus 属で記載したため、Kriesche はスマトラからその名もズバリProsopocoilus gracilis を記載している(1921年)。こちらのgracilisProsopocoilus flavidus (Parry, 1862)シノニムだとされているが、そんなわけでProsopocoilus gracilis は2つ存在しているのである。

TamDao




Prosopocoilus andreasi Schenk, 2009
アンドレアスノコギリクワガタ
グラキリスの最大内歯が基部に寄ったような種で、比較的個体数は少ない




Prosopocoilus denticulatus Boileau, 1901
デンティクラトゥスノコギリクワガタ




Prosopocoilus fulgens Didier, 1927
フルゲンスノコギリ クワガタ




Prosopocoilus katsurai Fujita, 2010
カツラノコギリクワガタ

Sapa



Prosopocoilus laterinus (Diodier, 1928)
ラテリヌスノコギリ クワガタ