Hexarthrius

これも日本には産しない属で、インド〜インドネシアにかけて数種が産し、フィリピンにも1種が分布している。 ベトナムにはHexarthrius vitalisi 1種を産する
ただ、属の共通点として触角の羽状片が6節であるということにこだわるあまり、明らかに近縁に見えるマキシカやベトナムシカが別属になっているのだが、一 方でスペクタビリスノコギリProsopocoilus spectabilis は触角の形状は同じであるが分類上はノコギリクワガタ 属であるし、ホウデンなどは分布的にも形態的にもやや異質に感じる。
フタマタクワガタという和名で呼ばれることが多いが、オニシカクワガタ・クシヒゲシカクワガタなどの呼称が用いられることもある

Hexarthrius vitalisi Didier, 1925
ssp miyashitai Baba, 1998
ヴィタリスオニシカクワガタ 大腮が長く伸び、体長はかなり大きくなる。原名亜種ssp. vitalisi はベトナム北部:ハノイ周辺に産し、鞘翅の色は黒い。
カンボジアを基産地として記載された亜種ssp miyashitai に相当すると思われる個体群が中部コンツム・クァンナム周 辺から得られていて、鞘翅がやや橙色を帯び、色彩だけを見るとHexarthrius tsukamotoi Nagai, 1998 に似る


TamDao



ssp. miyashitai



Kontum

ssp. tsukamotoi

広西壮族自治区



Weinreichius 属

Weinreichius perroti
だけからなる1属1種の属で、ペロッティシカ とかベトナムシカとか呼ばれる。原記載を見ていないので状況が不明であるが、Weinreichius Weinreichinus 両方 の表現が見られ、どちらが正しいのか未確認
Weinreichius perroti Lacroix, 1978
記載は意外に新しく、1978(発行日付を考慮して1979としている場合もある)年、20年ほど前までは世界に数頭(1説によれば3頭)しか標本がな く、最初の入荷の頃はものすごい価格が付いていたが、簡単に産卵飼育できることで価格は暴落した

Dalat S.Vietnam


Dalat S.Vietnam



Yumikoi属

所属格の"i"付ければいいってもんじゃないだろぉ!と言いたくなるような学名であるが、フランス語も読めず、原記載も見ていない段階ではよけいなことを 言ったり書いたりしない方が賢明であろう。例えば『牧伸二さん』に献名したのなら、makii でも何の問題もないわけである(Yumikoi の 方は知らんが)
というよりも、こんな頭楯だけの違いなんざWeinreichius属 でよくない?
Yumikoi makii Arnaud et Miyashita, 2006
マキシカクワガタまたはネアンシカクワガタと呼ばれる。Weinreichius perroti に酷似するが頭楯の形状が異なる

Nghe-an C.Vietnam


Nghe-an C.Vietnam


Rhaetulus属

シカクワガタ属、模式種はタイワンシカクワガタRhaetulus crenatus Westwood, 1871 である。日本産のアマミシカクワガタを含め5種いるが、ベトナムにはそのうち2種を産する。この2種は中部ベトナムで同所的に産するようだが、 他に2種のRhaetulus属が産するところは世界のどこにもな い
Rhaetulus speciosus Boileau, 1911
ssp. kawanoi Maes, 1996 comb. rev.
ssp. tsutsuii Fujita, 2010 comb. nov.
スペキオススシカクワガタはいくつかの亜種に分けられており、北部タムダオ周辺にssp. kawanoi が、南部ダラット周辺にssp. tsutsuii が産する
さらに、中部ゲアン周辺産をラオス産で記載されたssp. boileaui Didier, 1925とする意見もある
新大図鑑では ssp. kawanoi Rhaetulus crenatus Westwood, 1871 タイワンシカクワガタの亜種にしているし、そもそもssp. tsutsuii Rhaetulus crenatus の亜種で書かれているので、このようにサイトでいじるのはまずいのだがここではスペキオススシカを独立種と認め、tsutsuii を本種の亜種として扱っておく(サイトでの記述年月日が 不明確な状態でこんなことをやってはいけません)
昔くわがたマガジンでベトナム産のシカクワガタの分布をメチャクチャ書いてしまい(南部にkawanoi を産するとかいろいろ)、ここでやっているように『ベトナ ム産クワガタムシ概説』を書くときに訂正しようと思っていたのだが、訂正する機会がないままになって しまっているのでここで訂正しておく
ssp. kawanoi
大型個体では大腮基部下側の内歯が上から見えると表現される。腿節に明瞭な黄紋があることが多い

Tamdao

Tamdao

腹面



Tamdao

左 の♂は 22.5mm、アマミシカならどうと言うことのないサイズであるが、本種なら最小級であろうとBE-KUWAチビギネスに応募しようと展脚中、2011年 15 号台風の暴風によって窓が破損、部屋の中を渦巻いた風によってスチロール台とともに床を転げ回ったらしくごらんの有様に。
同時に応募しようとしていたペラルマトゥスマルバネ(チビ)も粉砕した
一応土屋編集長にこの状態で応募可能かどうか相談したが、「同じ条件で体長比較することが困難」との理由で却下された。当たり前である

ssp. tsutsuii
Ssp. kawanoi に比べ大腮が長く、体の下面が黒く て腿節に黄紋が見られない

Dalat S. Vietnam


Dalat S. Vietnam

大 腮を閉じると長いのが判りやすい

腹面


Dalat S. Vietnam

Rhaetulus maii Maeda, 2009
メイシカクワガタ ドンミヤマとクォンコクワとともに記載された種だが、原記載では和名が提唱されていない。ローマ字読みでマイシカと呼ばれることが多い がホープオオクワガタ同様メイシカクワガタと呼ぶべきと思う
ベトナム中部コンツム省周辺に産するが、BE-KUWAにあった通り、産地ではRhaetulus 属の種が2種混棲しているようでこのような現象は他では見られない。原記載の図を見ると本種の鞘翅はほとんど黄色に近いような 明るい色であるが、その後得られた生体を見るとほとんどがずっと暗い色をしており、産地の違いによるとも考えにくいのでタイプシリーズは何か特殊な薬品処 理をされた物ではないかとも言われている

KonTum prov. C.Vietnam

見ての通りこのような小型個体でも小さ い頭部の割に大腮が長く、ディディエールシカに近縁であることが見て取れる


Pseudrhaetus属

ザウテルシカクワガタ属 台湾のザウテルシカクワガタに対して三輪勇四郎博士が"Rhaetulus sauteri"を充てられたことがあり、その後この属に移動した後も和名はザウテルシカクワガタのままであったため、本属をザウテルシカクワガタ属と呼 ぶ
ザウテルシカ(=チュウゴククロツヤシカ)とオーベルチュールクロツヤシカの1属2種
Pseudrhaetus oberthuri Planet, 1889
オーベルチュールクロツヤシカクワガタ 主にベトナム北中部に産し、Hagiang周辺で比較的多くの個体数が得られている。台湾・中国産に比べ鞘翅の色 が薄く、橙色を帯びる。というか、ここのグループはすべて他の産地にはほぼ真っ黒の種が存在する(Weinreichius perroti Yumikoi makii はニグリトゥスオニシカをイメージ)が、ベトナムでは鞘翅が黄褐色を帯びるのが興味深い

Hagiang N.Vietnam

Hagiang N.Vietnam