Neolucanus protogenetivus  Y.Kurosawa,1976
アマミマルバネクワガタ
奄美大島・徳之島・請島に分布 請島の個体群はssp. hamaii Mizunuma,1994とされる
 歯型の変化が見られて『大歯型』が出現するグループの一つであるが、知る範囲では他種に比べてその割合は少なく、徳之島産と請 島産でそれぞれ数例知られ て いる程度。奄美大島産は従来知られていなかったが、BE-KUWA(むし社)33号ギネスで『奄美大島油井岳産 の大歯』個体が図示された。2009年10月オークションサイトに同一飼育群と思われる飼育品の大型個体が出品され、その紹介画 像の中に上記個体を含む大 型の個体が図示され てお り、さらに 2010年1月には上記の中の大歯個体も出品・図 示された。マルバネ類を特に大きくする飼育法というのは現在存在しないと思われ、従って野外でも『大歯型』が出現す る可能性はあると考えられる。    
 下に図示できた大歯型は上記個体群と同系統の瀬戸内町産F2飼 育個体

瀬戸内町 奄美大島



amami
湯湾岳 奄美大島
amami
金作原
protogenetivus
徳之島町白井
tokunosima
伊仙 徳之島
protogenetivus
伊仙町 徳之島

2013年10月1日、奄美大島とその周辺の5市町村(奄美市、龍郷町、大和村、宇検村、瀬戸 内町)で、希少野生動植物の保護に関する条例が施行され、アマミマルバネクワガタの採集ができなくなった。種指定であり、現在ま で記録のない与路島や加計呂麻島でマルバネを発見したとしても、合法的に採集し、発表する手段がなくなったことになる

ここに図示した個体は、いずれも条例の制定前に採集または飼育されたものです

現在、種としてアマミマルバネを合法的に採集できるのは、ハブだらけの徳之島だけになってしまった


瀬戸内町 奄美大島
Protogenetivus
奄美大島長雲峠
amamimarubane
徳之島町白井

ssp. hamaii  Mizunuma,1994
ウケジママルバネク ワガタ
むし社世界のクワガタムシ大図鑑で記載された瀬戸内町請島に産する個体群。♂では眼縁突起(左右で平行か後方に向けてわずかに幅 広くなる)や前胸側縁後部 (湾入部の前の部分があまり突出しない)の形状によりほとんどの個体は区別できるが、原名亜種との差 は軽微。しかし島嶼分布なので亜種として扱われることが多い
hamaii
大山 請島
hamaii
大山 請島
Allotype(神奈川県立博物館所蔵)
hamaii
大山 請島
条例により天然記念物に指定され採集禁止であるが、指定前に採 集された 個体やそれらを元に細々と累代されている個体が存在するようで、オー クションサイトなどでたまに出品されているのを見かける

Neolucanus okinawanus  Sakaino,1984
オキナワマルバネクワガタ
沖縄本島北部にのみ産する。最初はアマミマルバネの亜種として記載されたが、大歯の形状や♀の体型が明らか に幅広であるなどの点から独立種とする考えが有 力
okinawa
大国林道
okinawanus
照首山
okimaru
照首山
okinawanus
大国林道 国頭村
okimaru
照首山
okinawa
安波
okimaru
照首山
 1980年代までは道路上で多数の個体を見ることができ たが、 1990年代後半から採集される個体数が激減し、今では『レンタカーで100km走って1頭採れれば良い 方』などと言われる(くわがたマガジンで述べたよ うに別に走り回る必要はないと思うんだが…)。減少した時期に個体数に影響を与えるほどの採集圧がかかった とは思われないこと、当時はまだマングースが北 部国頭村に達していなかったこと、米軍演習場は半世紀にわたり存在しているが個体数の減少が最近起こったこ とから、林道整備による生息域の分断・乾燥化が 主原因と言われている

Neolucanus insulicola Y.Kurosawa,1976
ヤエヤママルバネクワガタ
八重山諸島(石垣島・西表島・与那国島)に産し、与那国の個体群は亜種donan Nizunuma,1984 とされる。体色はやや褐色を帯び、夜間採集で懐中電灯で照らすと赤っぽく見える
yaeyama
野底岳
yaeyama
バンナ岳
yaeyama
仲間川林道
yaemaru
仲間川林道
nsulicola
仲間川林道
nsulicola
バンナ岳
yaemaru
於茂登岳
yaeyama
仲間川林道
ssp. donan Mizunuma,1984
ヨナグニマルバネクワガタ
 石垣・西表に比べると生息地の範囲が狭く、産地における個体数はあまり多くないようである。しかしその(少ない)イメージと幼 虫の飼育が比較的簡単であ る ことが幸いしているのか、飼育されている個体数はかなり多いように感じる。
 本種は2011年4月1日より種の保存法に基づいて「国内希少野生動植物種」に指定されたため、譲渡などができなくなった。
 「売るのもあげるのもダメ」ということになったわけで、普通に3桁の産卵数になる本亜種は従来であれば『殖えすぎた分は他の人 にあげよう』というのが出 来たわけだが、それが違法状態になった結果おそらく飼育個体数は減ったのではないだろうか
 野生個体群に対する保護効果も怪しいもんだが、指定の結果「種としての個体数」が減るという結果になったと思われることが釈然 としない
donan
インビ岳
yonamaru
満田原
yonamaru
インビ岳
donan
比川





Neolucanus maximus  Houlbert,1912
マキシムスマルバネクワガタ
中国南部からインドまで分布し、台湾産も本種の亜種とする場合がある。大腮には「タテヅノ」が2対見られ、大腮基部の突起の方が 大きい。
アッサム周辺産は眼縁突起の形状や鞘翅の光沢が異なることからssp.confucius Lacroix,1972 とされる
ssp.confuciusに相当する個体
confucius
Thrumshingla National Park住所: Buthan
confucius


maximus
Fang N.thailand
mandible


ssp. maximus
maximus
Doi Inthanon Thailand
mandible


maximus
Sapa N.Vietnam
mandible



maximus
Nghe-an C.Vietnam
この行の個体の体長はほとんど同じだが、大腮の歯型は異なる







左個体の側面
maximus
maximus
Nghe-an C.Vietnam
maximus
Nghe-an C.Vietnam
maximus
Nghe-an C.Vietnam
maximus
Nghe-an C.Vietnam
maximus
Nghe-an C.Vietnam
maximus
Nghe-an C.Vietnam
ssp. fujitai Mizunuma,1994
fukien
福建省
眼縁突起が突出し、やや細身の個体群

江西省
江西省 九江

広西壮族自治区 大明山

広西壮族自治区 大明山
ssp. vendli Dudich, 1927
オオマルバネクワガタ
台湾産の個体群。独立種として記載されたが、旧大図鑑でmaximus の 亜種とされて以降この扱いが踏襲されている。
タイワン
タイワン
タイワン


Neolucanus perarmatus Didier,1925
ペラルマトゥスマルバネクワガタ
ベトナム北部〜中国南部に分布。中国産は大腮が長く伸び、上に向く歯の形状も異なるが、分布境界が不明瞭でクラインのようになっ ており亜種にするのは困難 と思うが、新大図鑑ではssp. goral  Kriesche, 1926 を復活させて中国南部〜東部の個体群の亜種名としている。
pera
Pia Oac
mandib

pera
Pia Oac
ペラルマトゥス
Sapa VietNum
ペラルマトスベトナム
Sapa VietNum

Sapa VietNum
本種♂の最大は80mmを超え るが、最 小は40mmを切る
左の個体は40mm弱で、BE-KUWAチビギネスに応募しようとしたところ台 風 のため破損してし まったもの
perarmatus
Nghe-an C.Vietnam
これ以降がssp. goral ?
pera
福建省
perar

perar
福建省

perar
広西省
←これでも中歯
横からのプロポーションはベトナム産とあまり変わらない
ぺらr

←このあたりの扱いが一番難し い  所 ではないかと思う

pera
貴州省 Dujuan
プロポーションはどちらかとい うと広西 省に近いが、大腮の形状は福建省と同じ
貴州省

貴州省
貴州省 Dujuan


Neolucanus saundersii Parry,1864
サンダースマルバネクワガタ
インド北東部からミャンマー北部にかけて分布している。平均的な大きさや大腮の形状に地域変異が見られるが、個体数が少ないため か現在までに亜種記載はさ れていないようである。しかし、本種の分類上の位置付けが明確になったのは下記のように旧大図鑑発行時であり、それ以前には日本 産を含む[タテヅノマルバ ネクワガ タ]にNeolucanus saundersii が充てられていた影響から、ヤエヤママルバネクワガタなどを saundersii の亜種として記述してある文献・サイトも多く見られる
saundersii
Darjeeling India
上を向く突起は先のものの方が
長い
saundersii

saundersii
Darjeeling India
 saundersii
N.India

 現在では クワガタ の輸入ルートが多岐にわたるようになってそれほどではなくなったが、少し前までは輸入ルートも数少なく、従って珍品が入荷したと きに最初に声をかけてもら える順番もある程度決まっていた。
 要するに我々のような末端に珍品が最初に来ることは無かったわけだが、それなら最初の方の順番が完全に決まっているかというと そうではなく、ある意味早 い者勝ちの部分もあったのである。
 『南西諸島のクワガタ採りの名人』の称号を恣にしていた水沼哲郎氏(月刊むしクワガタギネスにおける南西諸島産マルバネクワガ タの初代タイトルホルダー であったこ とからもそのあたりのことは伺える)は、その最初の方の一員であった。あるとき、ダージリンから大型マルバネクワガタの大歯型が 3頭入荷した。その内の2 頭はさっさと行き先が決まってしまい、タッチの差で出遅れた水沼氏に残されていたのは大歯とはいえもっとも小型の個体だった。
 だが、donan 記載時に多くの文献に目を通していた強みからか、水沼氏は入手した個体が従来入荷していた「タテヅノマルバネクワガタ」とは形態 が異なっていることに気づ いた。なんと、先に売れてしまった大型 の2頭はただの Neolucanus maximus (ただしssp.confucius )で、残されていた個体は『真の』Neolucanus saundersii 、世界のクワガタムシ大図鑑 223ページに載ることになる個体だったのである
saundersii
Putao Kachin
saundersii

saundersii
Putao Kachin
saundersii
Sagain Myanmar
saindersii
E.Kachin
東部カチンには、より体長 が小さくとも大歯型になる個体群が分布している
大歯型でも基部の突起はほとんど
認められない
saundersii

saundersii
E.Kachin


Neolucanus giganteus Pouillaude,1914
ギガンテウスマルバネクワガタ
大腮先端にのみ上向きの歯を有する。ごくまれに大歯型が出現することや前胸の形状から、タナカマルバネ−ギガンテウス−サンダー スは同じ系統の一群のよう に感じられる。
藤田(2010)は新大図鑑で、ベトナム北部〜広西チワン族自治区にかけての褐色味の強い個体群に対しssp.spicatus Didier,1930を充てている
ssp. giganteus Pouillaude,1914

Mai Phonsali N.Laos

Mt. Maotoushan Yunnan

Mt. Maotoushan Yunnan

ssp.spicatus Didier,1930  この亜種を認めるとすると、亜種の境界は 広西チワン族自治区〜四川省にあるようである
giganteus
TamDao
sgiganteus
Pia Oac
giganteus
Caobang VietNum

広西チワン族自治区 大明山
giganteus
広西チワン族自治区 大明山
左の個体は大歯ではないが、大腮基部に も小さいながら上向きの歯を有する。眼縁突起の形状も何となくtanakai っぽい。

giganman
giganteus
広西チワン族自治区
giganteus
広西チワン族自治区

Neolucanus maedai  Nagai,2001
マエダマルバネクワガタ
某氏はこの種が入ってきたときに、『Neolucanus yokozuna』 という名で記載したかったらしいのだが、永井氏が先にmaedai の名で記載してしまった。鞘翅の光沢がかなり強く、前胸の形状と合わせ他種との区別は楽。タイ中西部の比較的狭い範囲に分布して おり、最近ミャンマー東部 からもmaedai と 見なせる個体群 が得られたが、眼縁突起の 形状などに幾分違 いがあるようにも見受けられる。
maedai
Omkoi ChiangMai Thailand
maedaimandible
突起は非常に特徴的
maedai
Omkoi Thailand
左の2頭は神奈川県立生命の 星・地球博 物館所蔵のHolotypeとAllotype
撮影時はNeolucanus tanakai も所蔵されているはずだったのだが、県博には未所蔵とのこと。新大図鑑制作時にむし社F編集長もtanakai を借りに来たらしく、まだ水沼生物研にあるはずと聞いて大阪まで撮影に行った由





Neolucanus katsuraorum Tsukawaki, 2011
カツラマルバネクワガタ
前胸後縁の形状や鞘翅の光沢はN. maedai にやや似るものの、大腮の基部上向きの突起や大腮下面の形状が異なる。今のところベトナムのコンツム省、クァンナム省周辺から得 られているが、個体数はそ れほ ど多くない模様。フエ産ラベルも存在するらしいが、だとするとマエダマルバネと異なりかなり低標高のエリアにも分布していること になる。
 記載文には触れられていないが、maximusmaedai とは前脛節の突起の感じがかなり異なる

Mt.NgocLinn Kontum prov.

大腮基部が下方に張り出す

Mt.NgocLinn Kontum prov.

Mt.NgocLinn Kontum prov.

Mt.NgocLinn Kontum prov.

Mt.NgocLinn Kontum prov.

Quang Nam Prov.


Neolucanus waterhousei  Boileau,1899
ウォーターハウスマルバネクワガタ
大腮基部が太く、先端が独特の湾曲を持つ共通点から、次種baladeva (Hope,1842)のシノニムとされてきたが、ほぼ同じ体長で比較した場合先端の上に向く突起の有無から区別できるとして、 永井氏が独立種に復帰させ た。大型個体では区別は簡単だが、分布が重なっているので小型個体では判りにくい個体も見られる
india
Darjeeling
大腮には上向きの突起はない
water
waterhousei
Lim Cai Chinhills Myanmar
waterhousei
Lim Cai Chinhills Myanmar
waterhousei
Kanchenjang Nepal
waterhouse
Dahatingzen Kachin
大型個体では特に大腮が大きく
反り上がる
waterhouse


Neolucanus baladeva (Hope,1842)
バラデバマルバネクワガタ
インド北東部・ネパール〜ミャンマー北部にかけて産する。70mmを超えるような大型個体でも細かい内歯が大腮内側に並び、大歯 にはならないようである
baladeva
Kahsi Hills India
Neolucanus waterhousei に似るが
大腮には上向きの突起を具える
baladeva



Neolucanus angulatus  (Hope et Westwood,1845)
アングラトゥスマルバネクワガタ
インド
india
Sandkaphu Near Darjeeling
産地と記載文から判断する限り、左の 個体は表 記の種だと思うが…。

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