Dorcus
derelictus Parry,1862 デレリクトゥスコクワガタ インド北東部 比較的個体数は少ないようで、多くは出回っていない。このグループの傾向として最大内歯の位置が大型になってもあまり変化しないというのがあり、この種で は特に歯型の変化に乏しい。「インドアカアシクワガタ」と呼ばれることもあるが、そもそも腿節は赤くないし、HemisodorcusにされることはあってもNippondorcus にされたことはないはずで、「アカアシ」の呼称は適当とは思えない。 |
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![]() Sikkim India |
![]() Assam India |
![]() Sikkim India |
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Dorcus haitschunus
(Didier
et
Séguy,1952) ハイチュヌスコクワガタ 永井(2004) 大図鑑によれば、「Type」ラベルの付いた標本から見てアカアシであろうという判断だったのだが、実はこの標本、記載文に付けられた図とは大きく異なっ ている。その後、貴州省から記載文に良く一致する個体群が得られ、永井・岡崎(2005):月刊むし409号で発表されたものである 最大の内歯が大きく突出する |
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![]() 貴州省 雷山農場 |
![]() 貴州省 雷山農場 累代飼育 |
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Dorcus
rubrofemoratus
(Vollenhoven,1865) アカアシクワガタ 原名亜種は日本産で、この他にssp.chenpengi (Li,1992) (中国東北部、朝鮮、ロシア)と ssp.miyamai Nagai et Okazaki,2005(四川省)が記載されている。分布から見て日本海側の離島、佐渡島や隠岐の個体群は原名亜種だとしても、対馬産は ssp.chenpengi の可能性があるが、違いがよくわか らない。また、ssp.miyamai は小型個体で記載されたため大型個体の形態は不明。低地ではクヌギなどの樹液にも見られるが、標高の高いところでヤナギやカンバ類の枝に多数集まっている ことが知られている。 |
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![]() 日野春 山梨県 |
![]() 北海道 朱鞠内 |
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ssp.chenpengi になるのかな?![]() Mt.zhongtiaoshan 山西省 |
俗に言うアカアシクワガタグループの形態をまとめるとこのようになる
D. arrowi (Boileau,1911) の基産地はルビーマインズ(=ミャンマー東部)で、藤田(2010)によればこれらの形態から見るとD. magdaleinae グループと同じであり、産地の位置から考えて D. kachinensis かD. fukinukii のどちらかと同種である可能性が高い このグループで今のところ60mmを超えていないのはアカアシクワガタ D. rubrofemoratus だけである |
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Dorcus yamadai (Miwa,1937) ヤマダクワガタ 台湾特産種。ほぼアカアシクワガタと体型は同じで、実際亜種関係にあると扱った研究者もいる。違いは脚(腿節)が赤くないことと、最大クラスがかなり大き くなることくらい。台湾では南投県など中部の高標高地に多産しているが、最近は大型個体はほとんど見られない。 |
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![]() |
![]() 松崗 |
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Dorcus magdaleinae
(Lacroix,1972) アローコクワガタまたはコヤマクワガタ タイ周辺に産するこの個体群は標本をもたらした小山氏にちなんでコヤマクワガタと呼ばれているが、旧大図鑑ではこれにarrowi (Boileau,1911) を充てていたが、藤田(2010):新大図鑑では、基産地がルビーマインズで あるarrowi は 大腮の形状からカチンコクワかフキヌキコクワであるとし、本種にはDorcus magdaleinae (Lacroix,1972)を充てて3亜種に分けている。 |
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ssp.magdaleinae (Lacroix,1972) | ssp.chudoraziensis Fujita, 2010 ? |
ssp.nobuhikoi Fujita, 2010 | |||||||||||||||||||||
![]() Sapa |
鞘
翅の色は異なるが、産地から見てssp.magdaleinaeだ
ろう![]() Yunnan Prov. |
![]() Thrumshingla National Park Buthan |
![]() Doi Inthanon |
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ssp.
lieni Maeda, 2012 ベトナム のコンツム省周辺からは下のように大腮が長く、最大内歯より基部寄りに多くの小歯が並び、体長が最大で70mmを超える(BE-KUWAギネスにもなっ た)大型の個体群が得られており、前田(2012)で新亜種とされた。♂の大腮以外にも頭部の点刻が強い点や、♀の腿節が褐色である点などでも区別できる という |
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![]() Kon Tum prov. Vietnam |
![]() Kon Tum prov. Vietnam |
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Dorcus katctinensis Nagai, 2000とDorcus fukinukii (Schenk,2000) どちらもミャンマー産の個体を元に同じ年に記載され、色や前胸の形、大腮の太さが異なると言う意見もあるが、種どころか亜種の違いもあるかどうか怪し い。 |
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![]() Kachin |
![]() Chin Hills |
![]() Chudu Razi Mt.Range E.Kachin |
新
大図鑑に従えば、左記のどちらか、あるいは両方をまとめて Dorcus arrowi (Boileau,1911) と扱うことになるかも知れない 左の♀は前種の分布と重なるが、鞘翅の色彩からこちらに入れておく |
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Dorcus macleayii
(Hope et Westwood,1845) マクレーコクワガタ |
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![]() darjeeling |
![]() |
![]() Sandkaphu |
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Dorcus branaungi Nagai, 2000 ブラナウンコクワガタ マクレーの色違いと言ってしまえばそれまでだが、同所分布しているというラベルがあり、別種とする意見が有力 |
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![]() Chudu Razi Mt.Range E.Kachin |
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Dorcus donckieri
(Boileau,1898) ドンキィエルコクワガタ |
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![]() |
![]() |
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Dorcus
davidis (Failmaire,1887) ダヴィディスコクワガタ Dorcus davidis としてさらにヒメオ オっぽい個体が図示されていることがあり、産地間の差なのか調査中。標本はあまり見ないが、産しているところでは普通種で、ポプラの一種と思われる木など に付いているのが見られる。だが本種やsemenowi は現地では普通種でも、交通費などをかけて行ったところで他の虫がたくさん採れるわけでもなく、元が取れるほどたくさん売れる虫でもないようで、自分で取 りに行くか別の目的で旅行に行く人に採集を頼むしかなさそうなのが厄介。 |
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![]() 山西省 太行山 |
![]() 山西省 太行山 |
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Dorcus montivagus
(Lewis,1883) ヒメオオクワガタ 北海道・本州・四国。九州の個体群は亜種 adachii (Fujita et Ichikawa,1987) とされる。韓半島からの記録があるが最近得られたという話を聞かないし、『Distribution Atlas of Insects of Korea』および『Insecta Koreana(11)』いずれにも記載がない。本種の種名montivagus が一時期コクワガタの小型個体に(ヒメクワガタとして)当てられていたことがあり、1933年に訂正されたものの1934年に島根県隠岐から記録されたmontivagus はおそらくコクワガタだと思われる。このように古い「montivagus 」の記録は注意が必要である。 |
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![]() 徳島県那賀郡 |
![]() 奈良県大台ヶ原日之出岳 |
![]() 福島県檜枝岐 |
![]() 福島県檜枝岐 |
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![]() 石川県白峰村 |
![]() 徳島県那賀郡 |
![]() 熊本県 椎矢峠 |
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ssp. adachii
(Fujita
et Ichikawa,1987) 大腮の湾曲が強くつや消しになっている。このように分けて並べるとわかりにくいが、それぞれの標本を並べてみると表面の状態はかなり違って見える。 亜種としての違いは十分あると思われるが、それだけに広島で採集されたというつや消し個体は驚異である。 |
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![]() 熊本県 椎矢峠 |
![]() 熊本県 白鳥山 |
![]() 熊本県 椎矢峠 |
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Dorcus
sinensis (Boileau,1899) とDorcus
semenowi (Jakowleff,1900)とDorcus
kikunoae Hosoguchi, 2004 シネンシスとセメノウ、水沼(2000)では同種として扱われている。雲南省北部から四川省・チベットにかけては内歯が大きく頭楯中央部が平坦な個体群が おり(semenowi)、雲南 省周辺には内歯が細く頭楯中央部が前方へ膨らむ個体群(sinensis) がおり、新大図鑑で図示したベトナム産(kentai)とともにす べて別種とされた。北インドには前胸の形が異なり内歯がより細く開きが小さ い個体群がいて、別種kikunoae として記載された。ミャンマー北部の個体群は図示したように開きは小さく前胸の形もやや丸みを帯び、kikunoae への移行とも思えるが頭部のへこみはほとんど見られない。 |
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![]() Tibet |
![]() Sapa |
![]() Phang Xi Pang |
![]() Tibet |
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![]() Tibet |
![]() Sapa |
![]() Chudu razi |
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![]() |
![]() |
![]() |
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![]() Tibet |
![]() Tibet |
![]() 四川省 |
![]() Sapa |
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Dorcus nepalensis
(Hope,1831) ネパールコクワガタ ネパール〜インド北東部〜ブータン。体型や光沢はどことなく前種sinensis なんかのグループに似ているのだが、はるかに大きくなり個体数もそこそこ多い。ただ、最近は主要産地周辺の採集事情からかあまり入荷が多くない。 本種には[parryi Hope,1843]というAssamから記載されたシノニム(同物異名)があり、本種をDorcus 属に含めると Dorcus parryi Thomson,1862 がホモニム(異物同名)となってしまう。しかし、本種はHemisodorcus 属とされることも多く、その場合はこのような問題は生じない。 例えば Eurytrachelus costatus Boileau,1898=Dorcus metacostatus Kikuta,1985 は当該種の所属する属に関する問題だからまだわかりやすいが、Dorcus parryi palawanicus Bomans,1989=Dorcus ritsemae curvus Mizunuma,1994 はこのネパールコクワやオオヒラタの属をどう考えるかで決まってくるので(Dorcus parryi curvus やDorcus ritsemae palawanicus という組み合わせも可能)非常にわかりにくい。 |
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![]() Darjeeling |
![]() Darjeeling |
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