Dorcus metacostatus Kikuta,1985
スジブトヒラタクワガタ
奄美大島・加計呂間島・請島・徳之島。古い形質を残したヒラタクワガタと言われるが、古い形質のままというわけではなく、分布が狭いことから考えてこれら の島で特化したものだろう。スジブトヒラタの分布するこれらの島々では、例えばアマミノコギリクワガタの♀の鞘翅にこの種と同じ模様が入っているのも謎で ある。
スジブトヒラタ
伊仙町
sujibuto
奄美大島中央林道



Dorcus
consentaneus (Albers,1886)
チョウセンヒラタクワガタ
中国〜韓半島・対馬。中国産は大腮の幅がやや広く、先端の内歯のない部分が長いので亜種akahorii とされる。
チョウセンヒラタ
対馬 尾浦
cons
対馬 尾浦


ssp. akahorii Tsukawaki,1999
akahorii

akahorii
湖北省
consentaneus
広西壮族自治区 大明山





Dorcus titanus (Boisduval,1835)
ヒラタクワガタ
原名亜種はスマトラ産とする考え方が主流のようで、日本本土産のssp.pilifer (ホ ンドヒラタ)に対してオオヒラタと呼ぶことも多い。
日本産が細かく亜種に分けられているのに比べ、外国産はかなり大雑把。フィリピン産など正式には学名がついておらず学術上は同じ亜種である個体群に、いく つもの和名が付けられて一人歩きしている状態は良くないと言える。
ssp.pilifer Vollenhoven,1861 [ヒラタクワガタ]
本州・四国・九州とその周辺。北限は秋田−宮城ラインまでは確実で、平山博物館発行の「虫の世界」に青森産の記述があるがデータなし。
ヒラタ
佐賀市本庄町
ヒラタ
鹿児島県下甑島瀬尾
ヒラタ
東京都稲城市
ヒラタ
静岡県下田市
ヒラタ
佐賀市本庄町



ssp. castanicolor (Motschulsky,1861) [ツシマヒラタクワガタ]
五島列島産は亜種karasuyamai Baba,1999 (ゴトウヒラタ)という名前が ついており、記載文では対馬産の方体型と大腮が細く長いとなっていて、添えられたデータで見れば確かに違うのだが、実際個体を並べてみると一番違いがよく わかるものでこの程度の差しかない。しかも、九州との間にある壱岐島産も別亜種(イキヒラタ:ssp.)になっており、これら3亜種の変異には重なりが見 られる。また、♀ではまず区別することはできない。さらに中国産(ssp.platymelus ?)とは頭楯が異 なるとのことだが、これもはっきりとした違いが分かりにくい。別亜種とした場合、同定は産地ラベルを見るのがもっとも確かな方法である。
ツシマヒラタ
厳原市
ゴトウヒラタ
長崎県福江市
tsusima
厳原市
ゴトウヒラタ
長崎県福江市
斉州島
済州島



ssp. hachijoensis (Fujita et Okuda,1989) [ハチジョウヒラタクワガタ]
八丈島。島の南東側に散発的に分布しており、中ノ郷周辺では通称B型と呼ばれる(現在の命名規約上では型の記載は意味がないのでどのように呼んでも良い) 内歯の前方に寄ったタイプが見られる。
ハチジョウヒラタ
八丈町中之郷
hachijou
八丈町中之郷 通称B型
八丈町中之郷
八丈町中之郷
八丈町中之郷
八丈町中之郷
八丈町中之郷
八丈町中之郷



ssp. takaraensis (Fujita et Ichikawa,1985) [タカラヒラタクワガタ]
トカラ列島宝島・小宝島。


タカラヒラタ
宝島
タカラヒラタ
宝島
タカラヒラタ
小宝島
小宝島
小宝島
ssp. elegans (Boileau,1899) [アマミヒラタクワガタ]





アマミヒラタ
名瀬市
アマミヒラタ
湯湾岳
右は徳之島産         
ssp. tokunosimaensis
     (Fujita et Ichikawa,1985)
   [トクノシマヒラタクワガタ]

トクノシマヒラタ
伊仙町
ssp. okinoerabuensis (Fujita et Ichikawa,1985) [オキノエラブヒラタクワガタ]
エラブ
知名町
エラブ
和泊町
沖永良部産は鞘翅が褐色を帯びることが多い が、稀にほとんど黒色の個体もいる。
大腮の裏面に褐色の微毛が生えている亜種。
アゴ
ssp.okinawanus (Kriesche,1922) [オキナワヒラタクワガタ]
Macrodorcas
属をDorcus属にするとこの亜種とリュウキュウコクワが2次ホモニムになるので、大図鑑でリュウキュウコクワガタの種名が変更になり amamianus の方が種名として位置づけられた。
オキナワヒラタ
普久川ダム
オキナワヒラタ
大国林道
オキナワヒラタ
大国林道

ssp. daitoensis (Fujita ey Ichikawa,1985) [ダイトウヒラタクワガタ]
赤いヒラタ。これでも標本になってかなり色褪せた状態で、太陽光下で見ると特にきれい(というか、他のヒラタだったらテネラルの色)。
島ではもっぱら幼虫がモクマオウなどという木の腐朽木を食している。大正年間以前は大東諸島は鬱蒼とした森に覆われていたそうだが、そのころからモクマオ ウを食っていたのだろうか。
ダイトウヒラタ
南大東島
ダイトウ
南大東島
南大東島
南大東島
南大東島
南大東島
ssp.sakishimanus Nomura,1964[サキシマヒラタクワガ タ]
日本産【最長】はおそらくツシマヒラタであるが、体積も考慮に入れた【最大】はこの亜種ではないだろうか。
八重山諸島与那国島・西表島・石垣島に産し、周囲の小島からもいくつか記録があるが、宮古諸島には産しない(宮古諸島には少し変わったハナムグリはやたら といるのだが、クワガタの記録は事実上ない)。
Maes氏は日本(Japan)の『Clüba(文字化けに備えて書いておくと、3文字目はuウムラウト)』から[ダモアゾヒラタクワガタ Eurytrachellelus damoiseaui Maes,1982]を記載したのだが、そもそも日本にはClübaという地名はない。これについては「Chiba」と書かれた採集ラベルの誤読ではない かとも言われたが、タイプ標本に付いているラベルには印字で『Clüba』と書かれているので判断のしようがない。このタイプ標本については荒谷邦雄氏が 精査され、形質がサキシマヒラタの変異内に含まれる(つまり、ダモアゾヒラタはサキシマヒラタと同じ)ことを示された。その後、実際に千葉県と宮城県から サキシマヒラタと思われる(おそらく飼育されていたのがが逃げ出した)個体が見つかり、Clüba=Chibaの誤読説が当たっているのではなどとネタに なったこともある。これは笑い話で済んだのだが、考えてみればまだ記載されていないものの若干の変異が見られるヒラタ個体群が東南アジアから大量にもたら されている現在、もしそれらの個体が逃げ出したり放虫されたりして採集され、Maes氏の元へ届けられたら…今度は本当に有効名を持つ日本産の新種として 記載されてしまうか もしれない。

中筋 石垣島
sakishimanus
於茂登岳 石垣島
sakishimanus
仲間川林道 西表島

中筋 石垣島
sakishimanus
吉富 石垣島

中筋 石垣島


ssp.sika (Kriesche,1920) [タイワンヒラタクワガタ]
台湾産。学名は台湾におけるクワガタムシの呼び方の一つである『シカムシ』から来ているという話だが、この『シカ』は『鹿(つまりstag)』と言うわけ ではないらしい。
sika
合望山



ssp.titanus (Boisduval,1835) [オオヒラタクワガタ] 要するに原名亜種。
typhon
  Boileau,1905は亜種名として使えないのかなぁ。
titanus
Ache Smatra
Luzon
オーロラ 北ルソン
Palolo
Palolo Sulawesi

ボルネオ
Borneo Sabah
ミンダナオ
Mt.Parker C.Mindanao


ssp.platymelus (Saunders,1854)
Westermanni とは頭楯が異なる。境界はどこ?
pilifer
四川省
pilifer
広東省
pilifer
浙江省

ssp.typhoniformis (Nagel, 1924)
貴州省産とされる個体群は大腮が細く最大内歯の位置が中央に近づくという特徴が安定して見られるようだ。
貴州省
貴州省
typhoniformis
貴州省 遵乂


ssp.westermanni (Hope, 1842)
インドシナ半島からインド北部にかけて分布する個体群で、頭楯がssp.platymelus (Saunders,1854)よりも幅広く、体型も幅広く感じる個体が多い。
westermanni
Darjeeling
hirata
Hagiang Vietnam



Dorcus bucephalus
(Perty,1831)
ダイオウヒラタクワガタ
インドネシア:ジャワ特産種。ジャワの東西で若干の変異が見られ、大を閉じたときのプロポーションが異なっていることが大図 鑑で示されているのだが、図鑑内には解説がないので気づいていない人も結構いそうである。さらに、ジャワの現地昆虫商は島内の詳細データには無頓着で、ど う考えても不自然なデータがついている個体も多いことから、(元がどうなっていたか追跡できない状況では)ジャワ産として流通している繁殖個体の取り扱い には注意が必要である。
独立種とする扱いが主流であるが、実験的にパラワンオオヒラタとの交雑個体が得られており、少なくともFま では繁殖能力がある。
ダイオウ
Jawa Argopuro
daiou
Jawa Argopuro
daiou
Jawa Ijen


Dorcus kyanrauensis (Miwa,1934)
ミヤマヒラタクワガタ
台湾特産種。
ミヤマヒラタ
獅子頭
ミヤマヒラタ
松崗
kyanrauensi
松崗
miyamahirata
拉拉山
(縮尺が♂と異なる)
miyamahirata
南山渓




Dorcus thoracicus
Möllenkamp,1902
トラキクスヒラタクワガタ
カリマンタン島に分布。以下の3種は代置種関係だと思う。
thoracicus
Near Keningau
トラキクス
Near Keningau
トラキクス
Near Keningau
トラキクス
Sabah




Dorcus alcides (Vollenhoven,1865)
アルキデスヒラタクワガタ
スマトラ島。もっとも横幅が大きくなるクワガタムシの一つ。横幅ギネスとかやらないんですか、Tさん。
alcides
Mt.kerinci Sumatra I. Indonesia
alcides
Mt.kerinci Sumatra I. Indonesia
alcides
Mt.kerinci Sumatra I. Indonesia
alcides
Ache Sumatra I. Indonesia
alcides
Sumatra

Ache Sumatra I. Indonesia
alcides
Ache Sumatra I. Indonesia
長歯・短歯・中歯の 歯型が見られる。
左右の歯型が異なるタイプはそれほど珍しいわけではなく、しかも色々な体長で出現する。
ただ、なぜかほとんどの個体で右の方が長歯型になっている(短歯と中歯のタイプでは左短歯で右中歯)。2段目右側のように左が長歯なのは少ない。また、大 部分はこれらのように歯型が違うだけで長さはほぼ同じだが、水沼氏の「コレクションシリーズ:クワガタムシU」で図示されている個体は右の大歯あごが かな り長くなっている。

Dorcus eurycephalus
Burmeister,1847
ユーリセファルスヒラタクワガタ
ジャワ島。前の2種ほどは大きくならないようだ。
eurycephalus
E.Jawa