Dorcus uruslae (Schenk,1996)
ウルスラコクワガタ
記載されて10年以上経つが、個体数が少ないのかあまり知られていないようで生き虫もさっぱり入ってこない。広東省から得られているが、海南島にもいるよ うだ。
ウルスラ
広東省



Dorcus sawaii Tsukawaki,1999
サワイコクワガタ
浙江省開化産で記載されたが福建省にも分布しており、入荷のほとんどは福建省産とされている。他に広東省・ベトナム北部(ゲアン周辺)にも産する。♂♀と も中・後脛節に 3〜5本の外刺があり、♀の見かけはノ コギリともヒラタともつかない不思議な形態をしているが、区別すること自体は難しくない。
2011年、ゲアン省産が内歯前縁の形状などで区別できるとして別亜種として記載された。亜種名は種名の元となった沢井氏の奥様の名前が付けられており、 どのような和名で呼ばれるのか興味のあるところだが、ベトナムサワイコクワあたりで落ち着くのだろうか。
sawaii 
福建省
sawaii
三明市

 クワガタムシの♀標本はヘタに採集人 に頼むと売れないものが大量に集まってしまうため、流通ルートに乗りにくい。
 従って活き虫として来たものが標本になることもあるわけだが、本種は個体数がきわめて少ないようで、当然ながら♀は生きている限り産卵セットの中であ る。
 本種の標本は”ぱめ”ことN.R.氏のサイトとココ←で図示されているが、♀はどちらも産卵に使用されたものらしく触角や跗節が取れていて、完品の♀標 本が図示 されているサイトはないのではなかろうか。
ssp. norikoae Tsukawaki, 2011

Nghe-an C. Vietnam
Paratype

Nghe-an C. Vietnam

Nghe-an C. Vietnam

Dorcus amamianus  (Nomura,1964)
アマミコクワガタ
当初、♀個体を元にokinawanusamamianus がコクワガタMacrodorcas rectus (当時:属が女性形なのでrectusではなくrectaとなる)の亜種として記載され、♂の形態が判明 して種に昇格した。
その後、徳之島産が亜種kubotai として区別され、1991年には西表島の1個体によってyaeyamaensis が記載された。さらに大図鑑でMacrodorcas属 がDorcus属に統合されたため、okinawanus がヒラタクワガタ沖縄亜種のホモニムとなり、沖縄産には新名nomurai が付けられた。その結果、もっとも記載 が古いamamianus が種名(原名亜種)となった。そのため個々の個体群の和名に変化はないが、種全体を表す代表和名はコクワガタ→リュウキュウコクワガタ→アマミコクワガタ と変化してきている。
ssp.amamianus (Nomura,1964) [アマミコクワガタ]
奄美大島・加計呂麻島 鞘翅の点刻列がもっともはっきりする
アマミコクワ
赤土山 加計呂麻島
amamianus
住用 奄美大島
amamianus
中央林道 奄美大島
amamianus
♀の鞘翅
ssp. kubotai (Fujita et Ichikawa,1985) [トクノシマコクワガタ]
徳之島
トクノシマコクワm
三京
トクノシマf



ssp. nomurai Mizunuma,1994 [オキナワコクワガタ(種名として使われたときは主にリュウキュウコクワガタと呼ばれていたが、沖縄本島の個体群はオキナワ コクワガタとも呼ばれていた)]
沖縄本島 主に名護以北
リュウキュウコクワ
国頭村大国林道


Ssp.yaeyamaensis (Hori,1991)[ヤエヤマコクワガタ]は、公式には現在までに4♂1♀が採集されたのみであるが、土屋利行氏が採集した1♀から累代された個体が 複数存在している。
2011年に複数の個体が採集されたのを受けてか2012年は某マート組の松下泰平氏が西表に居座り、トラップ爆撃を仕掛けてシーズン中20頭程度を採集 したらしい
Krajcik(2001)のカタログでは、okinawanus(Nomura, 1964)とyaeyamaensis (Hori,1991)が『syn,』つまりシノニム扱いになっている。
Dorcus rectus  (Motschulsky,1857)
コクワガタ
 ご存じ最普通種。島嶼部の個体群が亜種kobayashiimiekoaemisimaensisyakusimaensis とされている。
 種小名の【rectus】はDorcus 属の場合で、本種をMacrodorcas 属にした場合には属の格に合わせてrecta となる。 そのため日本原色甲虫図鑑では正誤表で『→recta』とされていたのだが、なぜそうなったのか理解できずにDorcus recta などと書いてある書籍やサイトもあったりする。
ssp. rectus (Motschulsky,1857)


kokuwa
山梨県韮崎市
rentus
新潟県新潟市
kokuwa
静岡県下田市須崎
rentus
新潟県弥彦村
五島列島
福江島
rectus
新潟県新潟市
kokuwa
静岡県下田市須崎

ssp. kobayashii (Fujita et Ichikawa,1985) [トカラコクワガタ]
トカラコクワ
吐喝喇列島 中之島



ssp. misimaensis Tsuchiya,2003[ミ シマコクワガタ]
ミシマコクワ
口之永良部島
ミシマコクワ♀
口之永良部島


ssp. miekoae Yoshida,1991[ハチジョウコ クワガタ]
ハチジョウココクワ
八丈島 中之郷

雌雄モザイク
hatijoukokuwa
中之郷

ssp. yakusimaensis Tsuchiya,2003[ヤクシマコクワガタ]
タネガシマ
屋久島 宮之浦



Dorcus striatipennis (Motschulsky,1861)
スジクワガタ
屋久島産はかなり以前に亜種記載されていたが、1997年に台湾産と中国産も亜種になった。中国の湖北省〜四川省・ミャンマーにかけて大腮の短い近似種intricatus  (Lacroix,1981)が、ベトナムには内歯の開きが大きい別の近似種がいる。
ssp. striatipennis (Motschulsky,1861)
日本海側は離島にもちょこちょこ分布しているのだが、太平洋側で分布している離島は種子島と御蔵島だけか。八丈島から♀個体が得られたとも読みとれる記述 が某 雑誌にあり、これはその後訂正などされていない。しかし、同一の著者による以降の図鑑などでは分布に含められていないので、この記録?は削除されたと考え て良いだろう。だが、図鑑や雑誌に解説を書くのであれば、スジクワガタの分布に八丈島を含めなかった経緯をどこかで発表しておくべきなのではないだろう か。
ヤマナシスジ
山梨県韮崎市
種子島
鹿児島県 種子島


ssp. koyamai Nakane,1978[ヤクシマスジクワガタ]
屋久島特産亜種
ヤクシマスジ
屋久島



ssp. yushiroi Sakaino,1997[タイワンスジクワガタ]
台湾特産亜種 個体数はあまり多くない。
タイワンスジ
梅峰



ssp. continentalis Sakaino,1997[チュウゴクスジクワ ガタ]
記載時の分布地は四川省・湖北省 福建省や雲南省からも得られていて 、同じ亜種だと思われる。
シセンスジ
四川省 都江堰
ウンナンスジ
雲南省
suji
武夷山
suji
武夷山
Dorcus intricatus  (Lacroix,1981)
イントリカトゥススジクワガタ
大腮の短いスジクワガタ。貴州省・湖北省・四川省の他、図示したようにミャンマー北部にかけてかなり広い分布域を持つ。
イントゥリカトゥス
貴州省雷山県
intricatus
Chudu razi E.Kachin


Dorcus fujiii Nagai et Maeda,2010
フジイコクワガタ
ベトナム北部に産し、2006年頃から得られていたが、2010年ようやく記載された。最大で48mmほどの個体が得られており、それくらいの個体では大 腮内歯が上向きにも突出し、近隣産地からも得られているペラルマトゥスマルバネにも似た雰囲気になって興味深い。
tonkinsuji
Ha Giang VietNam
suji
suji
Ha Giang VietNam
suji
Ha Giang VietNam
suji
Ha Giang VietNam
suji
Ha Giang VietNam
suji♀
Ha Giang VietNam
大型では内歯の開きが大きく、中型個体でもスジクワガタとは完全に区 別できる。
 小型個体では意外にニセタナカと似ており、本種の方が前胸の幅が狭いなどの違いで区別できるようである。
 そういや小型♀も似てるわな。
Dorcus vernicatus  Allow,1938
ベルニカトゥスコクワガタ
ベトナム北部産は亜種itoi とされるが、Hagiang産・ Sapa産と TamDao産では形態がやや異なり、itoi はTamDao 産だけなのか、北西部産も同様に考えるのかという扱いは今のところまちまち。さらに、ほとんどの文献でタイ周辺と広東省周辺をどちらも基亜種にし ているが、大腮の形態は似ているものの頭楯の形状や光沢などは違うように感じる。
Vernica
Sapa VietNam
vernica
Sapa VietNam
vernicatus
Ha Giang VietNam
vernicatus
Ha Giang VietNam
vernicatus
広東省



ssp.itoi Bomans,1993
itoi
Tam Dao VietNam



Dorcus ratiocinativus Westwood,1871
ラティオキナティブスオオクワガタ
インド
ラティオキナチブス
Darjeeling



Dorcus suturalis  (Westwood,1871)
スツラリスオオクワガタ
インド西部〜パキスタン
suturalis
Batgram Pakistan
suturalis
India
小型の方の♂標本にはsuturalis のシノニムとされているopacipennis のラベルが付いている。ラベルには採集日付はないが、一緒にあった標本には1898年などと言う採集年が書かれていてかなり古いもののようだ。右♀はネパ レンシスかと思ったら、前胸の形状や産地から本種だろうとの指摘を受けた。
suturalis
Kulu Kandi
Dorcus kyawi Nagai et Maeda,2009
キャウオオクワガタ
ラティオキナティブスに似た雰囲気だが前胸の形が大きく異なり、特に本種は後角が尖る。この個体は永井信二氏所蔵標本。
kyawi
Chudu razi E.Kachin



Dorcus myinti Nagai et Maeda,2009
ミントオオクワガタ
鞘翅のスジがはっきりし♀の頭部のこぶは1つ。これらの個体も永井信二氏所蔵標本より。
myinti
Chudu razi E.Kachin
myinti
Chudu razi E.Kachin
myinti
Chudu razi E.Kachin
myinti
Chudu razi E.Kachin
Dorcus sukkiti Fukinuki,2004
スキットオオクワガタ
ミャンマーに産する。2000年に記載されたカツラオオクワガタDorcus katsurai Ikeda,2000 に似ているが、本種の大型個体は前胸前方の湾入が緩やかで、小型個体では鞘翅の点刻列が目立つので区別できる。中国南部にはカツラオオクワガタの大腮を長 くし たような近似種が分布しているが、おそらく未命名。
sukkit
Myanmar
sukkiti
Chudu razi E.Kachin
sukkiti
Chudu razi E.Kachin

Dorcus tanakai  Nagai,2002
タナカコクワガタ
上からの画像だけではわかりにくいが左の広東産は大腮が下に向かって湾曲していて、かなり長く感じる。右のベトナム産は.内歯の出方は異なるが、大腮の形 状 以外はほぼ同じなので亜種 meridionalis Nagai et Maeda,2010 とされ、学名そのまま『ミナミタナカ』と呼ばれている。
タナカコクワ
広東省
vietnamtanakai
Hagiang Vietnam
たなか
Ha Giang VietNam
tanakai
Ha Giang VietNam

t6anaka
Ha Giang VietNam
tanakai
Ha Giang VietNam

Dorcus parallelus (Say,1823)
パラレルスオオクワガタ
ohio
Ohio
para
Ohio


Dorcus parallelipipedus (Linné,1758)
パラレリピペドゥスオオクワガタ
Dorcus属の模式種。
paralleli
Greece
paralleli
France
パラレリ
France

Dorcus musimon Gené,1836
ムシモンオオクワガタ
musimon

musimon
サルディーニャ島
ウケ狙いの生態写真
よく見るとcurvidensグループのような頭部前方の突起がある。
musimonhead

musimon
Sardinya I.
上記2種(と、近縁 種)については、豊房氏のサイト『Paralleli』 が非常に詳しく、各産地の個体の画像(立体視可!)はもとより飼育・雑交実験、各国の呼称など多くの情報がまとめられているので参照していただきたい。
Dorcus sewrtzowi Semenow,1891
セウェルゾフオオクワガタ
分布産地にはカザフスタン、タジキスタンなどという地名が見られ、トルコ周辺にもいるらしい。この個体はDidierが1927年にカシミールから記載し たrugatus に相当しラベルもそうなっているが、この2種はシノニムとして扱われることが多い。
sewrtzowi
Kaschmyr N.W.India
sewrtzowi
やや側面から


Dorcus peyroni Reiche et Saulcy,1856
ペイロンオオクワガタ
シリア周辺の西アジアに産する。Beneshのカタログではpeyronis となっているが、記載文ではpeyroni となっているような のでここではこのように表記しておく。
peyroni
Turky

peyroni
Turky
左の2頭は一応♂だが、かなりの小型個体