Dorcus curvidens Hope,1840
クルビデンスオオクワガタ
中国南部・チベット・インド・インドシナ半島にかけて分布し、南限はミャンマー南部
日本産がまだcurvidens の亜種とされていた頃は、決して多くの個体が見られる状況ではなかった(月刊むし185号参照)。最初に多くの個体がもたらされたのは『チェンマイのカブ トムシキング』こと故小山氏の功績によるところが大きく(河野論文などを見るとタイ国内の多くの場所に分布しているのがわかるが、最初にたくさん来たのは チェンマイ産)、その後パイネの宮下氏ルートでインド産が見られるようになり、ベトナム・ラオス・ミャンマー産と続いた。ベトナム産はTamDaoで採集 していた頃は個体数も少なく大型は珍しかったが、Caobang周辺で採集するようになって大型が見られるようになった。ミャンマー(ビルマ)産は当初タ ニンダリー(テ ナサリム)州のみであったが、その後カチン州周辺からも得られるようになった。
水沼哲郎氏(2000:クワガタムシU Endless collection series Vol.5 ESI)によれば、中国広西チワン族自治区で故北脇和光氏によって同じ木から本種とhopei Saunders,1854 が得られており、さら に跗節の太さでも区別が可能(hopei の方が太い)であることから、これらは別種であるとしている。
海外のサイトでは同種の範囲をかなり広く認めたところもあるようだが、♀の形態も大きく異なり、生殖能力のある雑種が得られたという記録もないようなの で、別種の扱いが妥当と思われる。
インドクルビ
Darjeeling 
curvidens
Darjeeling
curvidens
Darjeeling
curvidens
Darjeeling
ブータンクルビ
Dampu 産とされる個体
ミャンマークルビ
Chin hills
curvidens
Dauna S.E.Myanmar
curvidens
Dauna S.E.Myanmar
タイクルビ
Chiang Mai
curvidens
Maemo Lunpang
curvidens
Wiangpapao

ベトナムクルビ
Caobang
piaoac
PiaOac
curvidens
TamDao
広西省
広西省 大瑤山
ラオスクルビ
Xieng khouang
curvidens
Xieng khouang
curvidens
Darjeeling
curvidens
Dauna S.E.Myanmar
curvidens
Chiang Mai
baobang
Caobang
curvidens
Xieng Khouang


Dorcus ritsemae Oberthuer et Houlbert,1914
パリーオオクワガタ
世界のクワガタムシ大図鑑ではいくつかの属がDorcus 属にまとめられたわけだが、Hemisodorcus とされるこ とが多いnepalensis もその1つである。
ところがこの種にはHope,1843 においてparryi の 名を付けられたシノニムがあり、統合によってDorcus 属に2つのparryi が存在する状況となった。
そこで次に古い有効名としてDorcus ritsemae が種名とされたわけだ。しかしこの種名はグループの中でもっとも形態の変わっているジャワ産に対して付けられたもので、これが種名だと言われてもなんか しっくり来ない。和名は結構定着していたので無理に「リツセマオオクワ」とか呼び方を変える必要はないと思う。
ssp. ritsemae Oberthuer et Houlbert,1914
東ジャワ
パリー群の中ではもっとも体に厚みが出るものの、最大級でも『大歯型』にならないのはbabai とこの個体群だけである。しかしcurvus でも大歯が出現するので、あるいは化け物が存在するのかも知れない
東ジャワパリー
Mt.Ijen
東ジャワパリー
Mt.Argopuro
ritsemae
Mt.Argopuro
ritsemae
E.Jawa
ritsemae
Mt.Argopuro
ritsemae
Mt.Argopuro


ssp. kazuhisai Tsukawaki,1998
西ジャワ ssp. ritsemae と はきれい なラインで分かれているわけではなく、両亜種の分布境界付近では複雑な分布をしている。
しかし、クラインで徐々に形態が変化しているわけではないので、亜種を分けても良いように思う。
西ジャワパリー
Mt.Halimun
kazuhisai
Mt. Salak
kazuhisai
W.Jawa
kazuhisai
Mt.Salak
kazuhisai
Mt.Gede



ssp. setsuroi Mizunuma,1994
ミンダナオ島 Kitanlad山にパイナップル畑ができるまではミンダナオ産ritsemae(当時はparryi)はほとんど国内に(世界にも?)標本はなく、特徴がある程度わ かるサイズの個体は橋本コレクション(→水沼コレクション)と磯貝コレクションにあっただけと思われ、どちらもMt.Apo産であった。
それだけにこれらの標本(↓)のいくつかは出回り始めてすぐ、とてもここに書けないような値段で購入したのだが、1990年以降多くの個体が Mt.Kitanlad周辺からもたらされるよう になって現在ではがっかりするほどリーズナブルになった。
ミンダナオパリー
Mt.Apo
ミンダナオパリー
Mt.Cotabato
ミンダナオパリー
Mt.Kitanlad
setsuroi
Mt.Kitanlad
setsuroi
Mt.Kitanlad

Davao S.Mindanao
setsuroi
Mt.Kitanlad
setsuroi
Mt.Apo
setsuroi
Mt.Kitanlad

Davao S.Mindanao
setsuroi
Mt.Kitanlad
setsuroi
Mt.Kitanlad

Davao S.Mindanao
setsuroi
Mt.Kitanlad


setsuroi
Mt.Kitanlad
setsuroi
Mt.Kitanlad


ssp. curvus Mizunuma,1994
パラワン島 上記のようにミンダナオ産は極珍だったため、1980年代までフィリピン産オオクワガタと言えばパラワン産であっ た。それでも個体数は決して多くなくしかも小さく、64mmを超えるものは皆無であった。65mm以上の個体は全部ヨーロッパに行っていたはずだが、それ ならヨーロッパでは大型個体が行き渡っていたかというとそんなことはないようで、Bomansが1989年にssp. palawanicus の記載に使用した標本は62mmだった。こ の亜種名はパラワンヒラタと同じで、ヒラタをDorcus 属とすると2次ホモニムになるから旧大図鑑で与えられた置換 名がcurvus である。
体長は最大 73mm以上に なるものの、大歯型に相当する内歯が前を向いた個体はとんでもなく少ない。3番目の個体は72.7mmあって1番目の個体より大きいがごらんの通り。ま た、パラワンの 大歯型とされているのはミンダナオ産との雑交だと言う人もいるが、頭部の形状(特に前方の突起)を見るとまったくミンダナオらしさが見られないので、少な くともミンダナオと の雑交の可能性はないと思う。
パラワンパリー大歯
Mt.Gantung
パラワン
Brook's Point
palawan
Brook's Point
palawan
Brook's Point
curvus
Mt.Gantong
palawan
Brook's Point
パラワン
Brook's Point
curvus
Brook's Point
ssp. volscens Didier et Seguy,1952
スマトラ・マレー半島・ボルネオ
 体型は curvidens より細く、大歯型では大腮は長く、内歯の位置は前方に寄る。大きさはスマトラ産では78mmに達し、マレー半島産でも75mmに達するようだが、カリマン タン産は70mmを超えたものを見たことはない。各産地ともライヒよりは標高が高いところに多く、スマトラではラマヒラタよりは標高の低いところに産する という
volscens
Sibolangit N.Sumatra
スマトラパリー
Sumatra Bukit tingi
スマトラパリー
Sumatra Padang
volscens
Bukittingi Smatra
マレーパリー
Cameron Highland
マレーパリー
Cameron Highland


ボルネオパリー
Kalimantan Sabah
ritsemae
Sabah

volscens
Berastagi Smatra
volscens
Bukittingi Smatra
volscens
Lampong Smatra
volscens
Cameron Highland
volscens
Kenningau N.Borneo
ssp. khaoyaiensis Baba, 2012
タイ南部、 少数ながらラオスとカンボジアからも得られている。河野(1990:月刊むし233号)によればチェンマイ周辺でも少数得られているらしい
 馬場(2012)はタイ産が他と区別できるとして表記の亜種としたが、D. nepalensisHemisodorcus 属 であるとしてparryi を有効名に戻すなど大層ややこしいこ とをしている。
 また、同時に ssp. ungaiae をシノニムに落としているが、「タイプが2頭で個体変異の極端なもの」というとらえ方は記載以後多くの個体が得られて亜種として扱われているのを無視して いるわけで、「マイケルソン・モーリーの測定方法には間違いがあったから相対性理論は正しくない」と主 張するトンデモさんたちと同じ雰囲気を感じてしまう
タイパリー
Thailand Korat
laos
Mt.Mon C.Laos


volscens
Corat E.Thailand



ssp.astridae Didier,1932
セレベス島 上記のようにCelebes (つまりスラウェシ)から記載された parryi Thomson, 1862 がシノニムの存在で消えたため、スラウェシ個体群に新亜種名toraja Tsukawaki,1998が与えられたが、検討の結果新大図鑑では表記の亜種名が復活した。しかしそもそも、Hemisodorcus を認める(nepalensis が別属であると扱う)のならparryi は生き残るわけで、馬場(2012)ではそのように扱っている。
セレベスパリー
Palolo
セレベスパリー
Palolo
セレベスパリー大アゴ突起
この突起がセレベス産の特徴
toraja
Palolo
toraja
Pulu Palolo Sulawesi
toraja
Pulu Palolo Sulawesi
toraja
Palolo Sulawesi
toraja
Palolo Sulawesi
ssp. ungaiae Nagai et Tsukawaki,1999
セレベス島南部のロンポバタン山塊( とその周辺:2009年に隣の山であるMt.Bawakaraengから得られた)に産する小型・細身の個体群である。
カバエナ島はスラウェシ南東部に位置する島だが、図示したように同様の特徴を持つ個体が得られている。
ウンガイアエ Mt.Lompobattang
ウンガイパリー
Mt.Lompobattang
南スラウェシ
Mt.Lompobattang
ritsemae
Kabaena I. Sulawesi tengghara
ungaiae
Mt.Bawakaraeng
ungaiae
Mt.Bawakaraeng
ungaiae
Mt.Bawakaraeng

ungaiaef
Mt.Bawakaraeng
ungaiaef
Mt.Bawakaraeng

南スラウェシ
飼育ならなぜか大歯は楽勝
Dorcus curvidens babai Fujita, 2010
ベトナム中〜南部に分布する種で、長らく未記載種としてcurvidens ssp. などど呼ばれていたが、新大図鑑でようやく亜種として命名された。しかし、歯型の変異や♀の形状から、どちらかというとritsemae グループの一員か、grandis に近い種だと思っている。命名されてすでに1年近くたつが、未だにcurvidens ssp. などと書いているオークション出品者がいるところを見ると新大図鑑を読み込んでいる虫屋というのは意外に少ないのかも知れない。
Dorcussp
Dalat
babai
Kon-Tum C. Vietnam

Near Dalat
sp
Dalat
Dorcussp
Near Dalat
Dorcussp
Bao Loc Vietnam