Dorcus grandis Didier,1926
グランディスオオクワガタ
記載産地はラオス: Xieng khouang とはっきりしていたものの長らく採集されず、タイワンオオクワガタと形態が似ていたため存在を疑問視する声もあったが、1994 年再発見。旧クワガタ大図 鑑発行直後のブー ムの時であり、大フィーバーを引き起こしたが、同時に現地ラオスに深 刻な経済的混乱を もたらしてしまった。その後ベトナム・インド・ミャンマーから得られ た。インド〜ミャンマーの個体群は前胸側縁の形状が異なるなど区別できるのでssp.moriyai とされている。
タイワンオオクワガタを亜種にする扱いが主流で、実際に容易に交雑して生殖能力のある次世代が得られる。しかし、タイワンオオク ワは日本産と形態的にも近 く、これまた生殖能力のある雑種が形成される。参考までに、下で図示した台湾産はすべて1994年以前の標本である。
したがって、海南島(正式に記録された報告は無い)の混棲が確認されなければ、grandis・ hopei・formosanus・binodulosusを同種にする考えも成り立つ。その場合の種名はhopei を使用することになる。
ラオスグランディス
Xieng khouang Laos
ラオスグラン
Xieng khouang
grandis
Xiam Nua
grandis
Pia Oac N.Vietnam
ラオスグラン
Xieng khouang
ラオスグラン
Xieng khouang
grandis
Phuoc Hiep C.VietNam

ssp.moriyai Nagai,2005
ミャンマーグランディス
Manipur Lamka NE India




ssp.formosanus Miwa,1929

南投県獅子頭
南投県獅子頭
ssp.formosanus

タイワンオオクワ
桃園県 特にhopeiっぽい個体
タイワンオオクワ
南投県萬大
formosanus
南投県南山渓

Dorcus hopei  Saunders,1854
ホープオオクワガタ(と、ほとんど誰も呼んでいないが)
東アジアに分布。日本産と朝鮮半島産をssp.binodulosus Waterhouse,1874 とする場合が多いようだが、「大型では区別できる個体が存在する」程度の差に感じる。
また、旧大図鑑での表記のためかssp. binodulosus を "binodulus" と綴っている書籍 やサイトの例が後を絶たな い。すごい影響 力のある図鑑だというのがよくわかる。
江西ホペイ
江西省九江
hopei_kyuukou
江西省九江
広西壮族自治区
広西壮族自治区
hopei_nankan
江西省南康
hopei_bui
福建省武夷山
hopei
四川省巴東山
kanton
広東省
♂♀中間型
雌雄中間型:日本産でも報告がある

ssp. binodulosus
yamanashi
山梨県韮崎市菖蒲沢
nirasaki
山梨県韮崎市菖蒲沢
okayama
岡山県津山市
やまがた
山形県 白川ダム

高知県美香郡
inagawa
兵庫県猪名川町
hopei
対馬市厳原町
ookuwa
対馬市厳原町
saga
佐賀県神埼郡千代田町
オオクワ
宮崎県宮崎市産 飼育
heiann
平安北道 天摩山
heian
平安北道 天摩山

コクワガタ♂×オオクワガタ♀ 種間雑種
野外でも稀に採集されているが、これはすべて飼育品。♀は出現率が低い。
hyblid

hyblid

hyblid

hyblid

アマミコクワガタ♂×オオクワガタ♀ 種間雑 種
一方、渡邊(2009)は実験的に表記の組み合わせにより雑種個体を得ることに成功し、発表した。生息地が重なっていないので自 然状態で雑交する可能性はないが、大きさがかなり異なるとはいえ、小型個体で結構形態が近く見える両者に雑種が生じるのは興味深 い。現在までのところ♀は得られていない。





Dorcus schenklingi  (Moellenkamp,1913)
シェンクリングオオクワガタ
台湾特産種。90mmを超える個体は図示されたことはないが、いろいろ大きな個体の噂が飛び交っている。特に台湾大学にあるとい う余裕で90mmを超える 標本は標本箱に並んだ写真が存在しており、いつか確かめに行きたいと思っている。オオクワガタと本種の飼育最大個体の大きさがほ とんど同じというのはあま りに不自然である。台湾では保育種(天然記念物)に指定されており、新たな採集個体が得られる可能性は事実上ないが、大型の人気 種ゆえ飼育されている個体 数は多く、入手自体は難しくない
シェンクリング
藤枝
巴陵
巴陵
シェンクリン
六亀
schenklingi
宝山 六亀
小型シェンク
高雄県藤枝
シェンク♀
南投県
schenklingi
六亀


Dorcus antaeus  Hope,1842
ssp. miyashitai  Fujita. 2010
ssp. datei  Fujita. 2010
アンテウスオオクワガタ
インドから中国、南はマレー半島までと分布は広く、各地の『顔』はあるものの亜種には分けられていなかったが、2010年ようや く新大図鑑で一定の指針と なりうる亜種記載がなされ、インド・ネパール産が原名亜種、タイ〜ラオスの内歯が大腮の中央に位置する個体群がssp. miyashitai 、マレー半島〜南ベトナ ムに産する大腮の湾曲の強い 個体群が ssp. datei と なった
antaeus
India




ssp. miyashitai
タイ・ラオス〜ベトナム北部〜海南島〜中国南部の個体群

ラオスアンテ
Xieng khouang
タイ
Chiang Mai
antaeus
Caobang VietNam
antaeus
TamDao N.Vietnam

ssp. datei
antaeus
Dalat S.Vietnam
antaeus
Cameron Highland



Dorcus gracilicornis Benesh,1950
ツノボソオオクワガタ
台湾の高標高地に産する。
台湾ツノボソ
松崗
gracilicornis
畜牧中心




Dorcus tonkinenis Fujita, 2010
タイリクツノボソオオクワガタ
長らく台湾産と区別されていなかったが、台湾産に比べ光沢が強いなどの相違点があるとして新大図鑑でSapaを基産地に新種とし て記載された。幾分種内変 異があり、 ミャンマー産は内歯が先に寄る傾向があるが未命名。しかし、Arrow(1950):Fauna of Indiaでantaeusの小型として図示されていたよう に、antaeusのシノニムで消されて いる中に本種に付けられた有効名が含まれ ている可能性があるので、慎重な調査が必要と思われる。
 gracilicornis
Sapa
piaoac
Mt. PiaOac

tunoboso
China
タイツノボソ
Chiang mai
gracilicornis
Doi Inthanon
gracilicornis
Doi Inthanon

gracilicornis
Fang Thailand
gracilicornis
Fang Thailand
gracilicornis
Darjeeling India
ミャンマーツノボソ
Kachin

Dorcus kamijoi Fujita,2009
ベトナム南部からカンボジア南部に分布している。藤田氏によって記載されるまで同じ地域にDorcus 属の未記載種が2種いたので、区 別するために頭部前方の突起 がある個体群(つまりcurvidens グループとわかる方)をcurvidens ssp. 、本種をDorcus sp. と呼び分けていた。
(中にはそういう種名だと思っている人が結構いたらしい。困ったものである。)
本種についてはschenklingi と近縁であるとの説が出されている(前胸の形状は異なるが、これはgrandis などを見れば判るように種内で変異が大きく、変異があまり見られない頭楯や交尾器は似ているため)。しかし、今のところインドシ ナ半島南部に限られた狭域 分布をしており、小型は大きなgracilicornis 、大型はanteus に似ているの で、2種が分かれた元の原始 的な種だと考えても 面白いかもしれない。
kamijoi
Near Dalat
sp2
Near Dalat
sp2
S. Vietnam